【文字の話9】Caslon(カスロン/キャズロン)
合い言葉は「迷ったらカスロンで組め」
活字時代には「迷ったらカスロンで組め」と言われたほど応用範囲の広い書体。
アメリカの独立宣言書に使われた活字として知られている。
イギリスのウィリアム・カスロンが18世紀前半に制作した。当時のイギリスはオランダのローマン体が流行していた。カスロン活字はアムステルダムの父型彫刻師ディルク・ヴォスケンスの活字をモデルにしたといわれるが、その武骨な特質を穏やかにして洗練さをくわえたことによって「イギリス風で快い」という称賛を得たという。
カスロンとつくフォントがたくさん!
カスロンの書体は後世に多くの影響を与え、そこから派生した書体が数多くある。
・Adobe Caslon(アドビ・カスロン)
米国アドビ社のキャロル・トゥオンブリが18世紀中頃の複数のカスロンを活字見本を研究してデザインを起こした。セリフやヘアラインが細すぎず、実用性を重視した本文サイズ用のデザインになっている。ボールド体のバリエーションがある。
・ITC Founders Caslon(アイティーシー・ファウンダーズ・カスロン)
「Founders」は活字鋳造所の意味。カスロンによるオリジナルの活字印刷物からスキャンして、活版のかすれの感じまでそのまま修正せずにフォント化した書体でITC社から発売されてる。ボールド体ではなく数字はオールドスタイル数字のみ。もとのカスロン活字にはそれらがなかったからだ。当時の活字になかったはずの@や円やユーロの記号などは作り足してある。
・Caslon 540(カスロン540)
カスロンの大型活字の特徴をフルに引き出した、アメリカの活字会社の20世紀初頭の見出し用書体。フランスの女性ファッション雑誌などにも頻繁に使われている。
他にも…Caslon Antique、Caslon Blackなどカスロンがつくフォントがたくさんあるが、元々のカスロンの原型からほど遠いものもたくさんあるらしい。
もはやカスロンを名前に入れるだけで「ちょっと良いフォント」っぽい感じになるのかもしれない。
調べてみて感想
改めて全体を眺めて、このフォントはレタリングしたら楽しいフォントな気がした。
数字の絶妙な斜め具合、優雅なQ、小文字のiとかfとか、セリフ体がたまらなくいい感じ。
美しい人を見ているようだ。優雅な女性にも紳士にも見える。
ダウントン・アビーをふと思い出した。あれはイギリスのドラマだったっけ。ちゃんと見た事ないけど、あの雰囲気をもっているような気がした。
私は、Adobeソフトを使っているので、Adobe Caslonがなじみが出てきそう。
「迷ったらカスロンで組め」こんな合い言葉が生まれた素敵なフォントを使いこなしたい。
参考
- 欧文書体―その背景と使い方・(著)小林章
- typetuto.jp -ローマン体の歴史
- From meブログ記事
- 書体の基礎知識 http://www.type-labo.jp/Shotainokiso2.html
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