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HAPTIC ―五感の覚醒
- 編集:株式会社竹尾
- 企画・構成:原研哉+日本デザインセンター原デザイン事務所
- 2004年9月30日第1刷発行
「HAPTIC」と言うのは英語で「触覚的な・触覚を喜ばせる」という意味だ。
この本には、「触覚を喜ばせる」ようなプロダクトが紹介されている。
株式会社竹尾が2004年に開催したTAKEO PAPER SHOW 2004「HAPTIC」展を書籍化したものだ。
形や色ではなく「触覚」を第一のモチベーションとしてデザインを行うことを様々なクリエーターに原研哉さんが依頼したそうだ。
面白いのが、デザイナー個人、パナソニックデザイン社のような会社もあり、左官職人もあり、建築家もあり、科学技術ジャーナリストもありで様々な人々が「HAPTIC」に挑んでいるというところ。
またこの本はHAPTICシンポジウムの時の記録が読めるが、原さんが冒頭でなぜ「HAPTIC」なのかと説明している。
原さんがハンス・デュリセラーという和紙の輸入業の方と会食した時に、和紙の風合いを称して「HAPTIC」と言われたそうだ。その言葉が気になって、後で辞書で調べたが載っていなくて、しばらくして電子辞書で調べたら意味が載っていてようやくその言葉を認識したとのことだ。
バーチャルリアリティの研究領域では注目されていると知り、これは素材やデザインの領域にも使えるなと思ったそうだ。
私は、グラフィックデザインを勉強していたころにこの本を知り、「HAPTIC」を知った。
そして一つの目標ができた。
HAPTICなデザインを作りたい、と。
今思うと、だから花や植物を扱うコーディネーターになったのかもしれない。
植物は触覚を喜ばせると思う。
チューリップは、いま右を向いていても明日には左を向いているかもしれないし、百合は蕾から咲いた途端に芳香な香りを発するのだ。
一生懸命アレンジメントをデザインしても一週間後には枯れゆく花になる。
グラフィックデザイナーになった今は、活版印刷に魅せられている。
あっちこっち職は飛んでるが、
HAPTICなデザインを作りたい、と思う気持ちはずっと変わらない。
そういう気持ちや欲求を持たせてもらったという意味でこの本はとても思い入れ深い。
13年前に発売された本だが、それから時代は進化して今、だんだん触覚の部分が細分化されてきている感じがある。
扇風機の風の質が開発されたり、トースターが進化を遂げたり。
ただの扇風機じゃなく、ただのパン焼き器じゃなくなってきている。
少し前は「香り」をプラスする商品が流行っていた。
なんだが人の五感を喜ばせる商品が出てきている。
まさにHAPTIC展が兆しだろう。
今本を開いて見ても、決して古く感じない。
それは、形や色などの流行に左右されるスタイルよりも「触覚を喜ばせる」というメインの制作意図が、人間がずっと持ってきた欲求だからではないかと思う。